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@teamster

BASIC member -7 karma
と申します…わけあって血縁をなくし、1人で生きていく身です。

こちらで働かせていただけると助かります。

よろしくお願い申し上げます」

顔を上げると、芳輝はまたふわりと笑った。

「うん。こちらこそよろしくね。

緋沙の大事な子なら、客人としてずっといてくれても私は構わないのだけど…」

「お気持ちだけありがたく頂戴致します。

働くことは、勝手ながら私の強い願いでもあるので…未熟者ゆえ、ご迷惑をおかけすることとは存じますが…どうかよろしくお願い致します…」

「そう。ならーー

加代さんに。
頼む」

「承知しました」

入り口で控えていた家臣らしい男ーー甚之輔が、頭を下げる。

「では、桜、こちらに」

「ありがとうございます」

詩は芳輝に頭を下げる。

それから、牙蔵をチラと見た。

「…牙蔵君は少し待って」

芳輝に微笑まれ、牙蔵は薄く微笑む。

ーーあ。これ。たぶん面倒くさい時の顔だ…

詩がそう思ったら、牙蔵に一瞬睨まれた。

「牙蔵さん…ありがとうございました」

「…ん」

詩は小さくお礼を言うと、甚之輔について広間を後にしたのだった。ーーーーー

ーー…

寒い寒いと無意識に思いながら、地下牢で眠りに落ちたはずの美和。

ーーあれ…暖かい?

ふと意識が浮上すると、ふかふかの掛布が掛けられている。
火鉢の匂い。

ゆっくり目を開けると、地下牢の格子の前に育次と、美和の養父である齊藤の顔があった。

「…」

美和は慌てて起き上がる。

「父上…育次さん…」

齊藤は目を潤ませて美和を見つめた。

「美和…良かった。

育次殿の話を、殿は聞いてくださった」

「え…」

「叉羽殿は間者であることーー小原はもとより高島につくこと

全て裏も取れた」

美和はホッと息を吐く。

「…そうなのですか…よかった…!」

潤んだ瞳で、美和は胸に手を当てる。

「戦の前にお伝えしなければと…
小原のことだけが…気がかりだったのです」

「美和…」

齊藤が目を潤ませて美和を見つめる。

「…美和は沖田の国を…いや…何より殿を…愛しているのだな」

美和はポロポロと涙を流す。
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